意拳浅談

意拳/大成拳を研究しています。翻訳は意訳です。

蓄力(『拳意図釈』より)

蓄力は試力を転化するための必経の道である。試力に初めて得るところがあれば、仮借した力と身体が呼応したことになり、これは将来意中の力の運用と施発の最も基本的な条件を備えることになる。拳を練習する人の多くは、站樁と試力の練習を経て、人と較べるときに身体が安定し、重心の控制能力が高まり、相手に自分の重心を崩されにくくなり、整体の功力が増強し、相手の力量に圧迫された中でも変化する能力が良くなったと感じる。しかし、相手の重心を失なわせ、さらに無力化させるまでには至らない。

多くの人は最初から発力の練習をして、相手に発して丈外に飛ばしたがるが、常に身体の勁が足りず手に力が入らないか、渾身の勁で相手を推すが、相手の抗力と正面から衝突し、時には自分の足元が不安定になり後ずさることさえある。もし本当に推手や断手の対抗に至れば、身体の硬直化、運力の不整、発力の機会の見誤りなどの問題が次々と露呈するに違いない。

以上のような練功中の問題は、主に試力が切実でなく外力相引が及ばないことにある。その中には、蓄力の練習を経ていないか、無視していることが多い。蓄力とは何か?  それは適切な時機に突然発する力量の条件を体内に蓄積することであり、ここには以下が含まれている。

(1)合理的な適時の身体重心調整
(2)正確な攻撃距離
(3)全身の筋群の高度な協調と随時待発の条件
(4)相手の重心の要害と弱点を見極める判断力

そうして初めて弓が引かれた状態を作り出すことができる。具体的な拳術の運用に至ると、それは各筋群の松緊状態と整体の協調の問題になる。蓄力とは、人体が動静を問わず変化する中で、常に周身の松緊が適切で、協調のとれた待発の力を蓄えることである。専門の蓄力訓練を経て初めて、站樁で得た中力、試力で知った運用の力を、本当の戦闘状況に集中させ、発力前の凶険な勢を作り出し、一触即発の勢を得ることができる。

1.控球蓄力

丁八歩を安定して立ち、両手で球を扶按することを想像し、周囲の間架と内在の要領を調整する。まず両手で球が水中に浮かぶ感覚を体験し、手の中の球の感覚が明確になったら、前方の水波が自分に向かって押し寄せてくるのを想定し、その水波の力に従って手の中の球が内側に揺れ動くと想定する。身体の各関節は弾力があるばねでつながれているかのように、水波の外力が球に作用してその影響が身体の各関節の全体の伸縮に及ぶ。水波の押し寄せる間隙では手の中の球はすぐに元の状態に戻り、全身の内蓄収縮も初期状態に復する。想定の水波の外力による緊縮時間はやや長く、水波は一陣一陣と来る。その間の空隙は短く、身体の放松時間は短いため、放松は迅速でなければならない。意拳の各種の功法訓練の総合的な要求は、松長緊短で、蓄力時は緊縮が放松より長くなるようにする。

2.頂簧蓄力

起勢は上述した通りで、両手は扶按式で、高きは肩を超えず、低きは腹を超えない。両足は丁八歩で前後に立つ。後脚の踵は少わずかに虚にし、両膝は僅かに外向きに前方に分頂する(意がある)。両手の十指は数メートル離れた壁の十本のばねとつながっていると想定し、周囲と両手のばねが呼応していることを確認する。ゆっくりと安定した動作で身体の重心を前に傾け、仮借したばねを整体で頂擠する力を生じさせ、遠くの壁までが揺れ動くようにする。但し、重心の前後比は最大で後7前3から前後各五、もしくはさらに少し前に移動するまでに留める。押し潰されたばねが身体に逆に作用する反発力を体験し、その反発力によって身体の各関節に生じる弾力の反応を感じる。そしてすぐに軽快に放松し、身体の前方への頂力の感があり、初期姿勢に戻る。この時、足下と頭の外延する弾力の感応に注意する。

3.拧簧蓄力

起勢は上述した通りで、両手の掌を内側に向け、十指を相对させる。球を撑抱していると想像し、その中央に手首の太さの垂直なばねが貫通し、球と一体化し、上は天に通じ、下は地に達している。まず両手で球を確実に抱え、左から右に水平に捻り、脚から膝、胯、肩、肘、手まで全身が同調して動作する。身体は垂直に中正を保たねばならないが、外形が若干変化しても充実した感覚があれば構わない。十分に捻ったら、すぐに放松して初期姿勢に戻り、 今度は右から左に捻る。やはり周囲の関節が球とばねの捻じれに対して反作用する力に留意する。

4. 攔縄蓄力

起勢は上述した通りで、両手の掌を内側に向け、十指を相对させる。抱えた球の前半尺の距離に壁があり、自分の胸の前約一拳の距離に、左右方向に張り詰めた弾性のあるロープがあると仮定する。両手で球を持ち、一方で内から外に向かって上に掲げ、一方で持っている球で半尺先の壁を突き上げ、身体の重心は相応して前に傾ける。球が壁にぶつかって抗力が生じ、胸の前が横に張ったロープに突っ張られて後勢に戻った時、球を持っている時は前足のかかとを僅かに上げ、足の下にばねがあると仮定し、壁に当たった時ちょうど前足のかかとの下のばねを踏み込み、身体が元の姿勢に戻った時、前足のかかとは自然とまた僅かに持ち上がる。球が壁に触れる接触時間は最初はぎりぎり触れる程度でよい。練習が進んだら、適宜調整してもよい。

劉普雷『拳意図釈』中国発展出版社より