意拳浅談

意拳/大成拳を研究しています。翻訳は意訳です。

月刊秘伝2017年9月号

韓氏意拳創始者韓競辰

  • 登場する先生
    • 韓競辰
    • (姚宗勲)
  • 内容
    • 武術名門・韓家からみた「中国武術近現代“拳史”」
    • 姚宗勲先生生誕100周年記念大会

印象に残った言葉

実は歴史上「拳舞」ができたのは父しか居ません。なぜなら拳舞というのは父のオリジナルだからなのです。これは強調しておきたいのですが、いま世の中で拳舞と呼ばれているものは自由套路のようなものですね。表現の形式は似ていますが、中身が全く違います。拳舞にあるのは「以不変応変」、すなわち站樁の中の”変わらないもの“を以って、すべての変化に応じる、ということです(韓競辰)

父は八人の師、祖父と王i郷齋先生を加えて十人の先生方から形意拳太極拳八卦掌通背拳、剪掛拳、洪拳、心意六合八法拳、意拳など多数ある北方地域の武術を学びました。さらに実戦経験を踏まえて己の中でそれらの経験をまとめ、実用性と自由な表現である舞いが自ずと矛盾なく生じる「拳舞」に至りました。この父の「拳舞」を師である王先生も高く評価されていたことは確かです。拳舞の一見簡単に見える動きには父の経験と十人の師の動きや面影が表れています。この「拳舞」の表現は、これらの経歴を持つ人にしか出来ないのですから、父である韓星橋一代限りのことだったという結論になります(韓競辰)

(伝統武術が現代に通用するかという問いについて)今の私の答えは簡単で、「大会や試合など、何らかの形で試せる場所に行き試してみれば良い」だけです。私の無錫にいる孫弟子が訓練を積んで散打の大会に出ました。体格的には決して恵まれているとは言えない線の細い青年でしたが、好成績を残しています。あまり技術的にはレベルの高い攻防ではありませんでしたが、挑戦する、試してみるという方向性自体は高く評価できます(韓競辰)

王先生は以前、西洋人が開いた上海の道場で、ボクシングの教練と交流し、ボクシングの訓練は非常に実戦的だと考えていた。そこで挑先生の自宅の道場では、サンドバッグ、グローブや胸当てなどを使うようになったという話である。特別に、日本の銃剣用の防具を借りてくることもあったようだ

站樁、試力、歩法、推手などの伝統的な練習法に加え、サンドバッグを使った練習、グローブをつけ、実際の試合形式で行う実戦練習が行われた。承栄先生の話では、仕事が終わったあと、急いで夕飯をとり、練習に赴き、帰宅してからもさらに練習をする日々だったそうだ

かわりに各地の若手の代表者が健舞などを披露したほか、散打の大会のチャンピオン、キックボクシングの選手など若者たちが舞台に立ち、意拳練功方法が現代の競技スポーツのトレーニングに取り入れられているさまを見ることができた

改めて、姚先生の功績について考えると、それは、激動の時代にあっても、意拳を伝え続けたこと、そして、意拳という伝統武術の訓練法をいかに現代スポーツに取り入れるか、また、ボクシングのような西洋の練習方法を、いかに伝統武術に取り込むか、模索したところにあるといえるのではないだろうか