太気拳という運命
印象に残った言葉
(澤井先生の初見の感想)衝撃でしたね。足をパッと上げるんですけど、”どうしてこの爺さんの足が”と思うほど動いて。その動きがまた綺麗なんだ(鹿志村英雄)
だから朝6時前の、神宮の門が開く前から門の前で禅を組んで待って、門が開いたら稽古をする場所で先生やみんなと12時くらいまで神宮で稽古をして、その後に今度は仲間のアパートに集まって、近くの神社で稽古。電車の移動の間にも逆手の稽古をしていたね。だから日曜日は朝から晩までズーッと稽古。やる気が半端じゃないですよ。その位じゃないと神宮は続かなかったですよ(鹿志村英雄)
(澤井先生に)最初の頃に言われたのは「君はスロースターターだ」と。「勝つには勝つけど勝負というのはそういうものではない。立ち合った瞬間に決まるものなんだからもっと早くしなければ駄目だ」と。それからは他流試合でも何でも、蛇の頭をガッと抑えるようになりましたね(鹿志村英雄)
(立ち会いのコツ)禅で養っている”前“ができていれば絶対に入らせない。空手の人とかは固いから前の手をちょっと抑えるともう反応ができないんだよね(鹿志村英雄)
あと先生も言っていたんだけど、普通の人は歩法で相手を追い詰めることはできる。だけど追い詰めた時に腰が上がってしまうので、重心を下げてババンと打つことができない(鹿志村英雄)
顔の三角(鼻と口の部分)を打たれたときは、「そこを打たれるようじゃ駄目だよ」と(澤井先生に)言われましたね(鹿志村英雄)
(澤井先生は)だって真似できない速さだもの。それを身につけるには一緒に動くのが一番早いんですよ。だから"生き(息)写し“だよね。島田(道男)先生が言うように、息が写れば技は後から生まれてくるんです(鹿志村英雄)
澤井先生も練馬体育館で教えてましたよ。逆手や巴投げといった捨て身技を習いましたよ。「拳法家も最低限度掴まれたときにやりなさい」と言われたね。倒された時の身体の使い方とか、そういう神宮でやらないことを練馬体育館ではやってたんですよ(鹿志村英雄)
(岩間先生について)ハチドリだね。パパパパと動く。早いよ! スウェーデンのマーシャルさんという大きい人とやったときに、ものすごく脚が動いて凄かったと高木先生から聞きましたよ。その時に岩間先生もなにか感じるものがあったんじゃないかな? そういうことがあるんですよ。私も日本拳法の人との組手で感じるものがあったから(鹿志村英雄)
(澤井先生から一番学んだことは)腰の位置かな。先生はやっばり腰・丹田の位置が極まってそこを軸にして動いているからね。だからぶつかっても重いんですよ。腰が崩れない。先生のあの腰は意識していましたね(鹿志村英雄)
先生は中心軸がしっかりしているからどんな変化をしても崩れない(鹿志村英雄)
体の前にある”地場”の密度が違う。我々はとてもじゃないけどね……。私は先生と組手を3 回させていただいたけど、パッと気がついたときには目の前に顔がありましたよ。なんにもできないですよ(鹿志村英雄)
(澤井先生は)病気されてちょっと足が悪くなって、少し痩せられましたね。だけど動きは最後まで伸びられていたんじゃないかな? 年相応の、その時の身体に合わせて動いていたから。逆にカが抜けてかえって強くなっていたかもしれないね(鹿志村英雄)
(姚系の意拳などを習って)最後に思ったのは、(澤井)先生の動きが一番速いと思いましたよ。だからミックスではなく解説書だね。やっばり先生の動きなんだよ。他のものは参考にはなるけど目標にはならない。先生の言ったことと先生の動きが唯一の財産ですよ。それを思い出し掘り出しながら毎日やって弟子を教えていると、少しずつ変わるものが出てくるんですよ(鹿志村英雄)
私が先生に免状をもらったときに言われたのは「鹿志村君、強ければ強いほど人に寛大になりなさい。大人という言葉を知っているかね? 細かいことを気にせず大河の流れを見るような人物になりなさい」とね(鹿志村英雄)
(澤井先生が王薌齋)先生が帰るのを押しとどめようとした時に、逆に腕を掴まれてスーツと持って行かれたそうで、「大木か何かで手を掴まれたような感覚で、今でも覚えているなぁ」と仰ってましたね。澤井先生は常に王郷齊先生の発カの力を求めていましたね(鹿志村英雄)
実は先生が亡くなる前に病院に行って、遺言を受けたんですよ。「21世紀は、君達がやってくれなきゃ困るよ。ヨーロッパからやどこからか大きいのが来ても、君たちが立って"太気はこういうものだ“と示せないと駄目だよ。頼んだよ」って(鹿志村英雄)
うちの弟子でも強さ求めて、強さだけってヤツは、だいたいすぐ辞めちゃうから。すぐ消えていくんです、そういうの。不思議ですよね。やさしいヤツはちゃんと残って強さを獲得していく。やさしさの中にしか強さがないって、「呼吸」が同じなんですよ(島田道男)
「あ、やられた」って思うとこまで行ったら、効いちゃうんですよ。「あ」の時点でガツンって行ってるかどうかだね。それは澤井先生がよく"手が間に合わない時は、頭・顔からぶつかれ!"って言われてたけど、体がそうならざるを得ない。そうなんなきゃ無理なんだ、アレ(島田道男)