意拳浅談

意拳/大成拳を研究しています。翻訳は意訳です。

抖大杆発力法(『大成拳新視野』より)

冷戦時代が遠く去った今、ほとんどの武術器械の練法は実用価値を失ったが、大杆は功力を強化する手段として、極めて現実的な技撃の意義を持つ。この発力訓練は古代の槍法から進化したもので、今や杆や槍の技自体の技撃価値を探ることは時代の要求に合わない。重要なのは、大杆が技撃者の各部分の肌肉組織を強烈に刺激し、肌体を膨張させ、炸力を通常以上に増強し、動作を迅速にし、一念が閃動すれば、肌筋郡が突然興奮し、神経系統が即座に高度な興奮状態に入り、戦闘への欲求がの毛穴の一つ一つに満ち溢れることである。徒手の発力法と比較して、大杆の運動量はより大きい。もし力が掌指に達して徒手発力の要求を満たしたならば、次に訓練者は大杆の杆頭を震わせることを求める。これには訓練者が深い功力と何百万回もの苦練が必要とされる。拳論では「器械は手の延長である」と述べられており、訓練者は大杆という強化手段を利用して、自身の功力を掌指よりも遠くまで運ばざるを得なくできる。将来大棒を捨てて再び徒手で力を発するとき、その透力の効果は大杆を練習していない者が想像することのできないものである。

良質で使いやすい大杆子を選ぶことは、無視できない技術的な問題である。可能な限り、表面が滑らかでささくれを取り除いた、傷がない約一丈長さの白腊杆を選ぶのが最良である。白腊杆は質が堅く弾力があり、何千回も振ることに耐えうるため、歴代の拳家に選ばれてきた。もちろん条件に限られる訓練者は他の木製の大杆子で代用することもできるが、練習効果は多少劣るかもしれない。杆が太すぎると力が棒先に届きにくく、棒身が細すぎると重力の振動に耐えられず、全体の動能を引き出すことができないため、持つ大杆は太さが適度で、自身の功力に合ったものでなければならない。これによって初めて使用が心地よくなる。練習道具の問題を解決したら、大杆発力の「把法」についてさらに探究し、研究することができる。

「把法」とは、両手で大杆を掴む方法である。大杆を握る際、主に三箇所で力を用いる必要がある、すなわち、親指の扣力、中指の擎力、小指の活力である。これら三つの力を掌握し、さらに人差し指と薬指を加えると、基本的な握りが完成する。これにより、器械が抜け落ちることもなく、かつ硬直したり怠けすぎることもない。拳論はこれを「握っても死なず、活発で力がある」と称する。左手(または右手)が前にあるのが前把、右手(または左手)が後ろにあるのが後把であり、手のひらが上を向くのが陽把、下を向くのが陰把である。動作の必要に応じて把位を前後に滑らせるのが移把、左右の把位を交換するのが換把である。大杆を降る(=抖)際、前後の把は虚実が明確であり、松緊が適切でなければならない。各種の大棒操法の「把法」を理解することは、棒術訓練において良い起点を見つけることに等しい。

杆術訓練は劈、挑、提、拦、扎などの法に分かれ、抖杆発力はすべて持杆式から始まり、様々な形式の運力を通じて、体の肌肉系統に全面的で周到な良性の刺激を加え、均衡な力の増強を目指す。

1.持杆式

左式を例にすると、ほとんどの姿勢の要点は托嬰樁と同じで、異なるのは両腕の位置がやや下げられ、高さは胸のあたりになり、両手で大杆の末端の約三分の一を軽く握り、前方に三分の二の杆身を空け、斜面で敵に向かうことである。前手は陽把で、托力を含み、後手は陰把で、按力を蓄える。二つの力が合わさり、その力度は大杆の重さにちょうど等しい。少しでも力が少なければ弛み、多すぎれば硬直する。大杆は身体に貼り付くようで貼り付いておらず、眼光は大杆の先端を通して遠くを射る。人と杆が一体となり、蓄勢待発である(図102)。

2.劈

持杆式で立ち、両脚の位置を変えずに体重を前に微妙に移動させ、前が実で後が虚となり、大杆に樁力を注いで、螺旋状に突き上げる(=鑽)勢いで、杆頭を上に斜めに指し、頭部より高くするが、これは発力ではなく、劈杆の前の蓄勢である。動きは比較的ゆっくりで、力は糸を引くように長く続く。上動は止まらず、容易に劈に変わり、動作が突然加速する。それに伴い両手が反対方向に翻転しし、前手は陰把に、後手は陽把に変わり、杆を下に捻り、大杆が波浪のように立体的な弧線を描き、腹前で停止し、同時に重心を急に沈めて、後腿に偏らせるが、両脚の位置は変わらない。この動作は実質的に劈拳から発展したものである。このように繰り返し練習する(図103、104)。

3.挑

持杆式で立ち、体は前に行きたいが先に後ろに引き(=拉)、挑杆の前に一度沈む。続けて上動を行い、陸地行舟歩で進みながら整体を前に進め、重心を密かに上げ、前把の上提と後把の圧構が合力を形成し、瞬間的に大杆の上挑動作を爆発させる。杆頭は上に斜めに指し、最初はゆっくりと感じ取り、熟練したら動作時間を短縮し、可能な限り速くするように反復練習する(図105、106)。

4.提

持杆式で立ち、後脚(右足)を右側に斜めに一歩進め、肩も右に回転させ、右肘を高く持ち上げ、前把を下に擦りながら手のひらを捻って上に向け、後把を上に持ち上げながら手のひらを前に向ける(=翻)。人が杆を引き、大杆が斜面で迎え、突然震え、内勁の提が杆を通じて外に出るが、外形には現れない。次に左脚(この時点で後足)を左側に斜めに一歩進め、同じ要領で大杆の提力を再発する。このように左右交互に練習する(図107)。


5.拦

持杆式で立ち、前足を体の左側にやや横に踏み出し、肩を左に回転させ、前把を立てて起こし、後把の力で横に出し、大杆を斜めに立てる。この時、後手が杆体に沿って少し下に滑り、前後の手が把位入れ替える動作を行い、瞬間に杆を抱き込む。この勢は旗が揺れるように木を揺るがすような、整体爆発が横方向に炸力を発揮し、力点は大杆の中段に集中する。続いて再び持杆式に戻り、蓄勢して再発する。不断で体感する(図108)。

6.扎

持杆式で立ち、肩腰を微妙に旋回させ、左右どちらでも円を描くように動かし、大杆で後抽の力を生じさせ、杆頭を想像上の敵の中央線に向ける。続けて上動を行い、後腿が跪くようにし(=跪蹬)、体が波浪の力を生じ、手を通じて杆に至り、動作要領は虎撲の技に隠されており、杆を槍として、体が杆を押し出す。前後の手は陽把、陰把を交替し、旋、擰、鑽などの内勁が複雑に絡み合い、大杆に作用し、強力な前方への扎の動作を形成する。

高手の運用は、大杆が波形を描き、一見すると複数の杆頭があるように見え、真假が難しい。これは波浪の形が大杆に自然に反映されたもので、一部の武術家が演技効果を追求するために意図的に行う「槍花」とは本質的に異なる。扎は抖大杆の中で最も一般的でありながら、功夫を最も示す発力の一つであり、発力者はこれを幾度も練習しなければならない(図109、110)。

 

以上の各式はすべて、左右の手、左右の脚の前後位置を交換し、同じ要領で厳しい訓練を行う必要がある。

章の最後に、筆者は王薌齋先生の言葉を引用し、発力の研究の指南とする。「発力は撃出を重んじないを知る必要がある。撃出、撃中、未撃中は、自己の本身が発出する力量、即ち前後、左右、上下の平衡で均正、具体的な螺旋錯綜の力量と不浪の力量、軽松、准確、慢中の快の惰性力量をみる必要がある。これは本能の発動ではなく、期せずしてそうなるのでもなく、もし知るに到れば、到る力量である」(『習拳一得』)。

発力を学び、基本的な造詣があると言えるようになり、次の段階である推手訓練に進むことができる。

黄景文『大成拳新視野』より