意拳浅談

意拳/大成拳を研究しています。翻訳は意訳です。

達人への道Ⅱ―中国武術の秘技

香港意拳浪漫「王薌齋は何を見つけたのか」

  • 登場する先生
    • 常志朗
    • 韓竟禹
    • 何家興
    • 陳徳傳
    • (西松正彦)
  • 内容
    • 常志朗老師インタビュー
    • 韓竟禹インタビュー
    • 何家興インタビュー
    • 陳徳傳インタビュー

印象に残った言葉

王老師が形意拳の名家、郭雲深先生に学ぶ際は、まず線香に火を点け、その日が消えるまで站樁をしました。恐らく2〜4時間でしょう。練習は非常に厳しく姿勢が崩れたり、要求通りにできないと足で蹴られたり、棒で打たれたりしたものです。もちろん質問などできず、ただ師の教えに従うのみでした(常志朗)

(王先生は)聴勁が巧みですぐ崩され、立て直そうとするその力を利用して飛ばされたものです(常志朗)

例えば站樁の効用、作用について信じることで得られるものがあるのです。まずは、間違っていてもいいから、師の言う通りに站樁するべきです。間違った方法ですら立てないようでは話になりません。その中で自然に会得するものがある。それを『功到自然成』と言うのです。質問もしてはいけません。もし質問して道理を説明されればそれだけ得るものは少なくなるでしょう。要求したレベルに達していなければ次のものを求めても仕方ありません(常志朗)

站樁では筋骨の鍛錬を重視します。それは主に腱、靭帯、軟骨などを指します。これら『筋』の繋がりを身につけます、力を用いたり、無駄に動いたりしてはいけません。筋肉の鍛錬ではありません。静止の状態で、不均衡の中の均衡を求めます。多くの場合は動作の中でこれらを求めようとするからわからなくなってしまうのです(常志朗)

ここまでくれば人と接触した時にでも部分的な力ではなく全体の力『整体力』となって表れてきます。その際に足、腰、体幹部に力がなければ力は出せません(常志朗)

静功(站樁)は高級なものです。無我、忘却の境地を目指すものです。己があるから雑念が湧くのです。一つひとつの站樁にはそれぞれの力があり、それらを深く追求していかなくてはなりません。絶えず自分自身を完全なものにしていかなければならないのです(常志朗)

辛くても立ち続ける必要があります。苦労せずして何も身につけることはできません。これを乗り越え手足と体幹部、中心とが関係を持って動けるようになるのです。さらに身体の緊張・弛緩・静・動・気・力・リズム、協調性が養われるのです(常志朗)

また運動をすれば筋肉は太くなります。しかし站樁を始めれば筋肉はどんどん細くなって筋が太くなります。肉ではなく筋が大事なのです(常志朗)

立てば自然に力は出るようになる。しかしいつ出るのか、出ないのか、私にも分からない。もしかしたら一生ダメかもしれない(常志朗)

ゆっくりと足を曲げ伸ばす、一回の上げ下ろしに1時間半かけました。足の勁が練られれば、足を上げた瞬間相手は吹っ飛んでいます。站樁で得られる勁も同じです(常志朗)

教学の主旨とは「自然本能の運用」「自由な精神の開発」「潜在能力の開発」にあります(韓竟禹)

站樁と試力、歩法の境はない。これは、状態であり、能力であり、形態ではない。動機が行為を決定し、行為が形体を決定するのだ(韓竟禹)

やりたいことをするだけ。自由を獲得できる。自由がなければ臨機応変でなくなり、本能がなければ、協調性もない(韓竟禹)

(站樁について)入門時は特に放鬆に注意し、それ以降は何も考えない。自然に調整される。意念(※意識)で湧泉穴(※足裏のツボ)を百会穴(頭頂部のツボ)まで引き上げる。そうすることで姿勢が安定し、歩法が巧みになる。呼吸、丹田も重視しない(何家興)

(拖腰という前後の試力について)ポイントは脊柱を引き伸ばすようして、重心は前から後ろ、後ろから前に10:0になるまで移動させる(何家興)

(墩腰という上下の試力について)脊柱の24節を1節1節動かし、バネのように使う(何家興)

(王薌齋先生が伝えたと言われる龍虎二勢について)龍勢は脊柱の伸縮によるバネのような力、発放力で虎勢は脊柱を真っ直ぐに立てて出す力、驚炸力、驚抖力と呼ばれて殺傷力が高い。龍勢は鬆、柔なのに対し虎勢は緊、剛である。北京の意拳では虎勢のみ伝承されている(何家興)

(站樁のポイントについて)肩を緩め、肘を垂らし、胯(※股関節)を緩める。そうすることで生まれる力が大切です(陳徳傳)

(站樁を行う長さについて)長すぎると筋肉が緊張して弾力がなくなります。平樁は8種類ありますが、一つを約5分ぐらいでしょうか。8種類の平樁はそれぞれ目的が異なっています(陳徳傳)

站樁はただ止まっているだけに見えて実は力は常に働き続けている。陳老師が学生に触れ、その僅かな感覚を確認する。これが站樁での試力だ。站樁と試力は分けて行うのが北京式だが、香港韓星垣伝では站樁の中でも試力をやるところがポイント。その動きは非常に小さいことも特徴だ