意拳浅談

意拳/大成拳を研究しています。翻訳は意訳です。

推手的規律性探討(『大成拳新視野』より)

1.実点与虚点

単推手、双推手のいずれにも、実点で触れる(=搭)か虚点で触れるかの問題がある。

実点

その方法は、敵と自分の伸ばした腕が触れ合う(=搭)点で、運力は松沈を求め、上への力量を特に重くする。あたかも相手を杖として扱うようで、しかし円転霊活の意を失わないようにする。実点で触れるのは、通常、相手との力量の高さを競う意図があり、数回回してみると、力量が劣る者は肩が酸く、腕は軟らかくなり、敗れ去ることになる。一部の者は、単に体重や拙力で相手を押し込もうとするが、これは実点の本意を失っている。

虚点

その方法は、点に軽霊虚空の力があり、あたかも医者が神を凝らして脈を診るようなものである。虚点で触れることで、敵の意図を洞察し、最短の時間で正しい反応を出すことができる一方で、自分の力を最大限に収斂させ、推手で相手を放つための稲妻のような攻撃に十分な勢を蓄えることができる。一部の者は、搭点の虚にのみ注意を払い、自身の站樁の均整な支撑を軽視する。これは本末転倒の方法であり、虚点の運用によって敵を制する際にも注意すべきことである。

推手の練習では、実点と虚点を霊活に掌握し、機を見るに応じて行動するべきである。自分の力量が相手より強ければ実点で、力量が相手と同等ならば虚点で接する。

2.守中用中

点位における虚実の問題を明確にした後、対手とどのような原則で競うか? それは「守中用中」である。

古人は、鼻が頭部の中央に位置すると考え、鼻を基準に縦に一本の直線を引き、これを人体の中線と呼んだ。この線は身体の重心の位置を決定するもので、「守中用中」は人体の中線に対して行うものである。

守中とは、自身の中線が侵犯されないようにすることである。もし敵の力が攻めてくるなら、「遠く美しいものを求める必要はなく、目の前の寸間で変化する」(薌齋歌訣)だけで、重心をわずかに横に移し、点にわずかに滾転の力を加えることで、敵の力を自身の中線の両側にずらし、余裕を持って敵の攻撃を解決する。自身の中線を守ることで、運動対抗中に重心を安定させ、さらなる反撃のために勢を蓄えることができる。

用中とは、運力の方法に関わらず、相手の中線に作用させ、相手の重心が常に自分の脅威の中にあるように強いることである。相手の中線を指す手は、必ずしも相手の身体に触れる必要はなく、相搭する点を通じて作用力を加えることができる。これにより、直接的に攻撃し、相手の身体の平衡を破壊し、打撃に有利な条件を作り出すことができる。

故に、力を相手の中線に加えることが、推手で勝つ鍵である。「守中用中、その環中を得て、無限に応じる」ことは、推手の妙技を探求する指南と言える。守中用中の観点から見ると、推手の価値の核心は、誰が何歩後退するか、または誰の動作がどれほど美しいかではなく、誰が相手の身体の平衡を破壊するのが上手であるかに体現される。

3.弁証施技

推手の技法変化の中で、多くの要点の実施には弁証法的な方法が必要である。

松緊

前に説明したように、肌肉系統の松緊の全体的な把握において、私たちは陰松陽緊によって蓄え、陰緊陽松によって発する必要がある。推手に応用するとき、特に運動機体の局所的な霊活な把握において、松緊は点上と身体上、梢節(掌指)と根節(肩部)において相互転化がある。

一つ目に、実点で触れるとき、身体の肌肉が松であるほど、点上で相手に与える圧力が大きくなる。これを点緊身松と言い、大成拳の惰性力の特殊な表現である。虚点で触れるとき、点上の力は有るようでも無いようでもあり、身上では弓のように力が蓄えられ、陽面の肌肉群が弓の弦のように緊となる。これを点松身緊と言い、機を探り待発の勢である。

二つ目に、敵との周旋の過程で、梢節と根節の松緊の変化を使う必要がある。つまり、背部の力量は常に含まれていて発せられず、上肢の局部の力だけが絶えず試探的な攻撃を行い、敵を驚かせる。梢節が緊であれば根節は松で、梢節が松であれば根節は緊となる。機があれば、すぐに体の背部の力量が強く発せられる。この試探的な攻撃は「問勁」と呼ばれる。以上から、推手では身体の各部位の松緊を区別して扱い、その真意を弁証法的に理解する必要がある。

動静

一般的に、推手の特徴は一動すれば全体が動き、一静すれば全体が静まることで、これは体の各部位の調和を訓練するためである。しかし、推手の特定の条件下では、動静は運動機体上の矛盾対立の統一を示し、これも敵を誘い込み、制御するために必要である。

上動下静の場合、推動の中で自身の上半身の動きが相対的に大きく、相手に大きな重心調整をさせることを誘い、同時に両足はその場に定位し、蹬力を蓄え、相手に感知させないようにする。相手の動きが大きいほど、相手をできるだけその場に留まらせずに後退させるのが最善であり、その結果防御が隙を見せやすくなり、それが進攻の機会になる。

上静下動の場合、相手の防御に隙があると感じたら、すぐに攻撃せず、点上で静止し、上半身も動かさず、同時に足を軽快に敵の側面に移動させる。これは、点上で相手にいかなる刺激を与えず、相手が反応する間もなく、突如として推し出されるようにするためである。

他にも左静右動、左動右静の推手における制敵法があるが、ここでは詳しく述べない。結論として、動静を弁証法的に把握することは、大成拳が法に合致しつつも法から脱する上乗の境地である。

4.留出提前量

相手は一般的に自身の中線位置を厳密に防御しており、直接攻撃する場合、通常は効果を上げることが難しい。これにより、「留出提前量」という推手の課題が引き出される。

もし手を使って相手の胸部の中線を直接推す場合、相手は通常の反応に従い、簡単な下圧の動作であなたの攻撃を容易に解消することができる。また、もし手を使って相手の肩部を推し、その目的が胸部の中線にある場合でも、相手が依然として通常の下圧で反応したならば、あなたの手は勢いを借りて、円滑に相手の胸部の中線に落ちて、相手の下圧の力とあなたの前推の力が一体となって相手に作用することになる。

これが「留出提前量」攻撃の効果であり、肩部から胸部までの距離が提前量である。提前量については、推手では一つの例から三つほどの実例に反映することができる。例えば、相手の上挑を防ぐために、攻撃目標を数寸下に移動させたり、相手の左抜を防ぐために、攻撃目標を数寸右に移動させるなど、一つに固執せずに様々な対応を考えることができる。

黄景文『大成拳新視野』より