意拳浅談

意拳/大成拳を研究しています。翻訳は意訳です。

BUGEI2001年冬号

天才武術家王薌齋が残した超革新的拳法、意拳

  • 登場する先生
    • 于永年
    • 西松正彦
    • 王玉芳
    • (姚承栄)
  • 内容
    • 意拳創始者、王薌齋
    • 意拳、その構造と力
    • 套路を超越した画期的訓練システム
    • 新世代の旗手が実践する、新しい指導のかたち
    • 王玉芳老師が語る等身大の王薌齋

印象に残った言葉

王先生は身長が低く、やせ型で、筋肉質でもなかった。けれども普通の人と推手で手を交えると皮膚が痛くなるだけだが、王先生との場合は腕の奥、骨まで響くほどの激痛と衝撃があった(于永年)

(于永年先生曰く)しかし王老師が人を打つと、やられた相手が「もう一度(打撃を)味わわせてほしい」と頼んでくるほどであったという。その打撃は今まで味わったことのない不思議な感じのもので、どう打たれたかも分からず、しかも痛みもないものだそうである

さらに先に相手を飛ばす方向を示してから、言った通りの方向へ飛ばすといった芸当も王老師は簡単にやってみせた。その筋肉、神経は非常に敏活なものであり、力の方向、力点、タイミング等の把握が実に正確で、王老師は非常に高い境地へ達していたと于永年老師はいう

王先生の動きは、まさに『一触即発』だった。しかもどこからでも発することができ、これも全て鬆緊の関係だ(于永年)

全身をゆるめるのでなく、部分的に必要なところと、そうでないところをしっかり認識する必要がある。人間の体でいちばん力みやすく、放鬆が必要なのは肩であり、逆に最も力を出しにくいのが足である。したがって『上松下緊』『根松梢緊』の原則をもとに、まず訓練をするとよい(于永年)

(于永年先生に)「イメージ(意念)」についてお聞きすると、前後の力は手と首、膝と背中で、左右の力は肘と膝、上下の力は頭と足を用いて養うようにし、これらを全体的に統一して「渾元力(六面力)」を養うのだという

「站樁」においては脚部のコントロール(上下、左右、前後等の変化)に注意して行うことが大切である。于老師は繰り返し「外形不動、脚掌動(外形は不動だが足は動く)」と語った

于老師曰く、試声も発力などと同様に、全身の筋肉や内臓までを総動員して丹田から発するようにしなければならないとのこと。老師の腹部に触れさせてもらうと、発声の際に収縮して上に上がるような感覚があった

(姚承栄先生について)散手練習も拝見させていただいたが、姚老師は軽快な歩法(いわゆるフットワークとは異なる)を使って、最も簡単に相手のスキに入りこんでゆく。はたから見ていてもそんなに速い動きには感じられないのだが、皆、すぐ追い込まれてしまうのだ。しかも手法の変化にも富んでいて、対戦している者に聞いてみると、手があちこちから、しかも何本もの手が打ってくるように錯覚してしまうという。また姚老師が対戦中に時々発する声は、体の芯まで響くほどであった。発拳の威力を知ろうと、試しにほとんど拳を体につけた状態から打っていただいたが、ずしんとくる重みのある打撃で、体の内部にいつまでも違和感が残った(西松正彦)

父は酒やタバコなども一切やらない、とても厳しい人でした。眼光も鋭くて黒く光っているように見え、弟子たちはおろか子どもたちですらまともに目を合わすことができないほどだったんです(王玉芳)

王玉芳老師によると、薌齋老師は、太極拳八卦掌形意拳のほか、ヨガや軽功にも優れていたようである。机を両手で叩くようにしてついて、反動で壁を飛び越えてみせたこともあったといい、運動能力の高さがうかがえる

力は入れ過ぎても抜き過ぎてもダメなんです。鬆と緊が適切に配合されてなければなりません。站樁で腕を挙げる時は、関節ごとに肩から手先の方へ順番にゆっくりと挙げてゆき、外に張るような感じにするといいでしょう。含胸抜背は、通常は軽く行うようにし、攻撃時に強く行うのです。『形曲力直(形は屈曲しまっすぐ)』『力不出突(力は先から出す)』といわれるように、形はまるく、力は一方にかたよらないようにして、均等に張り出すんです。これは弓を張ったのと同じ状態です(王玉芳)